プロコーチ
養成スクールProfessional coach training school

学生の頃の私は、いつもどこか冷ていて、一緒に楽しく過ごす仲のよい友達もいませんでした。大学時代にインターネット関連のビジネスで起業するも軌道に乗らず、むしろ多額の借金の対応に追われて就職活動もできない状況で、社会に放り出されてしまいました。

どうにかこうにか、あるコンサル会社に就職し、しばらくは上司もかわいがってくれたのですが、私の仕事の仕方が問題だったのでしょう。
徐々に上司の態度が厳しくなり、激しいパワハラを受けるようになったのです。心理的に追い込まれた私は、職場にいるのが耐えられなくなり失踪。
当時は両親とも折り合いが悪くて実家に戻る勇気もなく、半ばホームレスのような毎日をしばらく過ごしました。

このままでは生きていけない。そう思って最終的に実家を頼りましたが、再就職となると恐怖がこみ上げてきます。やっとの思いで派遣会社に登録し、事務の仕事に就いた職場はすごく暇だったのですが、前職時代にパワハラ上司から「先回りして仕事しろ！」と叱られた経験から、暇な職場で給料をもらうことも怖くて仕方ない。そこで自発的に業務改善プログラムを作ったところ、直属の課長がずいぶん喜んでくれて、それ以降いろいろと気にかけてもらえるようになりました。

なにか夢があって派遣で働いているわけでなく、消極的な理由でここにいることを課長に話す機会があり、「やりたいことがないのなら、この会社で一緒に働かないか」と社員に誘ってもらえたときは、本当にうれしかったです。社員になったからには期待に応えたい。そう強く思った私は、がむしゃらにがんばりました。そしてチームを任されるまでの成果が出せたところまではよかったのですが…

ふと気づけば、過去に受けたパワハラを、自分がチームメンバーに対してするようになっていました。自分がされて嫌だったことにも関わらず、メンバーに厳しい言葉を投げつけて傷つける。ひとり、ふたりとメンバーが辞めていきました。このままではいけない、何かを変えなくては！そんな状況の中で私は、平本先生が提唱するアドラー心理学をベースとしたコーチングに出会ったのでした。

コーチング関連の本は何冊も読みましたが、平本先生の著者の内容が最も理にかなってる気がしました。そもそも怖い人が苦手だった私にとって、ホームページに載っていた先生の優しそうな笑顔は救いでもありました。

この人からコーチングを学ぶぞ！意気込んで2日間のコーチング講座を受けに行ったのですが、初っ端に言い放たれた言葉は…「今日はコーチングは教えません」

こうして、受講生が平本先生からコーチングを受ける形で、講座はスタートしたのでした。

「本当にやりたいことは何ですか？」平本先生のコーチングは、この質問から始まりました。

自分がどんな人間で、何が好きで、誰と一緒にいて、どんなことをすれば、パフォーマンスが発揮できるのか。自己理解によって潜在能力が発揮され、自己実現に向けた行動ができるようになると先生は言います。

一方で、自分を理解しないままに夢を描いても、それは誰かの期待に応えるためだったり、誰かに傷つけられないためだったり。いわゆる他人軸からできた偽りの夢だとしたら、エネルギーは湧き上がってこないのだと。

自己理解を深めるには、幼少期までの記憶を遡りながら、過去に自分の感情が動いた体験を丁寧に棚卸しします。そのワークで、私は、高校2年生の文化祭の出来事を思いだしました。

友達も作らず陰気な私は、クラスで舞台をすることが決まっても、準備や練習に加わりませんでした。ところが本番一週間前に、通し稽古をしている横を通りがかったところ、もうめちゃくちゃな状態でした。みんなが意気消沈していてる様子を見て、何だかかわいそうに思えた途端、「役に立ちたい！」って心のスイッチが入ったんですね。「だいじょうぶ、成功するから！俺を監督にしてくれ！」そう言って仲間に加わり、全体の流れを見直して、取り組んだ一週間は、私にとって唯一の青春でした。

すっかり忘れていたその出来事を思い出した瞬間、私は気づいたのです。みんなを励ましながら、一緒に何かを作り上げることが好きなんだということを。
そして文化祭に限らず、同じような過去がたくさんあったことを。

ところが実際に会社では、私は真逆のことをしていました。上司の評価が下がることに怯えて、自分も周りも幸せにならない偽りの目標を掲げ、「監獄の看守」と社内で呼ばれるほどチームメンバーを追い込んでいました。でも本当は、みんなで一緒にクリエイティブな仕事がしたかったのです。

2日間のセミナーを終えた翌日。私は全身全霊でメンバーに謝罪し、本当はみんなと仲良く仕事がしたいと伝えました。ゼロだった信頼関係を作るために、誰よりも早く出勤してフロアを掃除し、大きな声で自分から挨拶しました。時間はかかりましたが、徐々に雑談や仕事のことも話せるようになりました。

半年後には、みんなが楽しく仕事できる雰囲気に変わり、コーチング的なこともできる関係にまで改善しました。監獄と呼ばれていたチームは「仕事の学校」と呼ばれるようになり、あのチームに入るとやりたいことが見つかって、仕事が楽しくなって、スキルも身につくからと、異動を希望する声があがるほどに変化したのです。

1年が経過して、私は社内でのコーチングに自信が持てるようになっていました。平本先生に現状を報告したい、そしてさらに深くコーチングを学びたい。
そう考えた私は、上級のクラスを受講することにしました。レッスンは、先生の前で実際にコーチングし、フィードバックを受けるというものでした。当初の自信とは裏腹に、まったく対応できず、他の受講生も誰一人うまく関われないほど難しいケースでしたが、平本先生は見事なデモンストレーションを見せてくれました。本当に複雑な課題に悩んでいる人、難しい状態に陥っている人の対応は簡単ではないことを思い知らされましたが、同時に、アドラー心理学に基づくコーチングをしっかりと学んで身につけたいという目標ができました。

「コーチングを教える講師になりたかったら、たくさんコーチングをしなさい」平本先生のアドバイスに従い、スクールのアシスタントをしながらコーチングセッションに励みました。そして、講師になりたいという熱意が天に伝わったのか、チャンスは思いのほか早くやってきました。

上級クラスを受講した一年後の2007年から、コーチングに興味ある人に対して、先生と一緒にコーチングの技術を教えることになりました。さらに2010年4月からは本格的なプロコーチ養成スクールをスタートし、今年で12年目を迎えます。
このスクールでは、アドラー心理学を使ったコーチングに必要なことをすべて学ぶことができます。

コーチを育てたい、コーチを増やしたいと私が強く思うようになったのは、自分自身の人生が変わったことが大きく影響しています。崩壊していたチームメンバーとの関係を再構築できたのは先述の通りですが、実はそれ以外にも様々な課題をコーチングによって乗り越えることができたのです。

例えば、少人数なら問題ないのに、4〜5名を前にすると脂汗が流れるほど極度に緊張してしまうという昔からの悩みを、一回のコーチングで簡単に克服することができました。また新しい上司はとても優しい人なのに、なぜか苦手意識が強くなり近寄れなくなっていたのですが、昔の上司とのトラウマを解消するセッションでスカッと解消し、翌日には普通に話ができるようになりました。

コーチングと出会う前の弱い自分のままだったら、この社会で生きていけなかったかもしれません。生きる自信がなく、居場所もなかった私に真剣に向き合ってくれたコーチに、私は人生を救われました。だからこそ、救われたこの人生をコーチングを広めることに役立てたいのです。

支えがないと生きていけない人に対して、アドラー心理学を使ったプロのコーチとして関われる人を増やしたい。コーチングを受けて自分らしく幸せに生きていく人が増えれば、社会もよりよくなるはずです。

優れたコーチの条件は、コーチ自身が自分の心に素直に、自己実現しながら、人生を楽しく生きていることです。だから受講生は全員、自分の人生を幸せに生きられるようになってほしい。そのために本スクールでは、なによりもまず自分を知ることを大切にしています。

自分ってこういう人間だったんだ！
自分ってこんなことやりたかったんだ！
そんな自分を受け入れて、自分にそれをやらせてあげてください。自分がやりたかったことをやっているとパフォーマンスが上がり、人生が楽しくなります。そうして、本当の自分に出会うことができます。

苦手なことは、人に助けてもらえばいい。自分は自分の得意なことで、人の役に立てばよいのです。それでもやっぱり苦手を克服したいと思うなら、コーチングを通じて乗り越えることもできます。そういったクライアント体験が存分にできるのも、本スクールの特徴です。

あなたの人生はあなたが選んでいる。そう聞くと、どんなことを思いますか？生まれ育った環境の違いは確かにあります。それでも、たとえ今どんな状況であっても、人はいくらでも変わることができます。
人生は選択の連続であり、最終的に決定するのは自分。アドラーはこれを「主体論」と呼びます。

自分を変えたい、あるいは人間関係を変えたいと思ったら、ほんの少しでも今までと違うことを選んでみたり、行動を変えてみたりしてほしい。しかし、自分の人生をすべて自分が引き受けて、自分で作っていくのは勇気がいることでもあります。だからこそ、お互いが勇気付け合えるようなコミュニケーションが大切というのが、アドラーの考え方です。

スクール卒業生からは、6ヶ月間ずっとコーチングを受けているようだった、という声を聞くことも少なくありません。私はコーチングの理論やスキルを教えながら、受講生全員に対してコーチとして関わります。ひとりひとりに「自分は変われるんだ」という体験をしてもらうと同時に、クラスの仲間が変わっていくのを目の当たりにして、「人って変われるんだ」「人が変われる場所を自分も作れるんだ」と確信してもらうことを大切にしているからです。

「何でもやれるとしたら何がしたい？」といった質問のスキルを身につけることも大事です。しかしそれ以上に「この人は、何であってもやろうと思えばできる」という信念がコーチの中に生まれることが、何よりも重要だと考えています。そして目の前にどんな人が現れても、その人の本当の思いに関心を持ち、その人の可能性を信じ続けられるコーチになってほしいと願っています。

私はプロのコーチを目指す人だけを支援するわけではありません。コーチングを使って、本当の自分らしい人生を生きると決めて、その人生を生きていく姿を見るのが、私は好きです。

私の親は理想が高くて、子供の頃から何をしても誉められたことがなく、家庭に居場所が見いだせないまま大人になりましたが、真剣に向き合ってくれるコーチのおかげで、関係がよくなかった親と向き合うことができました。
結婚にも興味はまったくなかったのですが、親子関係が変わったことで、家庭を持つのもいいかなと思えるようになり、今は結婚して子供もできて、本当に人生が変わりました。

私と同じように、親に認めてもらえなかったり、人に裏切られたりして勇気がくじかれてきた人は、もしかすると自己防衛的な考え方に捕らわれてしまって、人生を建設的に生きることができずにいるかもしれません。それでも自分の可能性を信じる誰かが側で支え続けてくれたら、勇気を取り戻して、人に貢献して生きる人生を望む、人間愛に溢れた人に変われるはずです。

私の究極的なビジョンは、世界中の子供達が10歳になるまでに、「自分はすばらしいし、この世界は自分を大切にしてくれる。一緒に生きていける仲間がいてくれる」と思える体験をしてもらうことです。

そのためにはまず大人が、自分を受け入れ、自分がやりたいことを通じて、周りの人も幸せにできることを、子供達に示してほしい。未来を担う子供達がみな、そんな大人から無条件に応援される環境で育ったら、彼ら彼女らはどんなにすばらしい社会を作っていくことでしょう。私が皆さんにコーチングを教えることが、よりよい社会の実現につながればうれしいです。