コーチングブログ
認知論:ピンク色のレンズの眼鏡をかけている人は、世界がピンク色だと勘違いしている
コーチングやコミュニケーション、アドラー心理学の宮越流解説。今日は、『認知論』について解説します。
「人生ってどんなものですか?」
と聞かれたら何と答えますか?
あなたの心にきいてみてほしいのです。
・人生って◯◯
・人生って☓☓ではない
あなたから出てくる答えがどんなものだとしても、それはあなたがこれまでの人生で体験してきたこと(なかでも特に印象に残った体験や、繰り返された体験)をもとに作られているのです。
そうではありませんか?
そして、ほかの人は、あなたとは違う体験をしているため、人生について違うように考えているのです!
一見当たり前のように聞こえるかもしれませんが、そうだとすると、人の考えがそれぞれなのは背景になる体験が異なるからで、どちらが正しいということはないという考え方も出てきます。
このような、
客観的な事実(真実)があるわけではなく、それぞれの主観があるだけという考え方
それが「認知論(仮想論)」です。
アドラーはその考え方をとっています。
そして、話はこれだけでは終わりません。ちょっと想像してみてください。
・「人生は長い」と考えている人と、「短い」と考えている人
・「まだまだ可能性があるし何をやってもいい」と考えている人と、私には何もできることはない。つらいことが続く」と考えている人
それぞれの人生は、この後どうなっていくでしょうか?
さきほど確認したように、どちらかの考えが真実でどちらかが間違っているわけではありません。それぞれの人生で体験したことが考え方に反映されているだけです。
けれども、一度ある考え方を採用すると、それが人生に影響しはじめてしまうのです。
「私には何もできることはない」と考えている人は、チャンスを探すこともないので巡り合わないでしょうし、チャンスがあってもチャレンジしてみようとはしないでしょう。その結果として、自らが信じた通りの人生となる可能性が高いのです。(これを、「自己充足的予言」といいます)
「人生」についてどう考えているかだけが、重要なのではありません。
・世界は?
・日本は?
・自分の地域は?
・自分の会社は?
・自分の家庭は?
・自分は?
・まわりの人は?
などなど、いくらでもあるのです。
あなたがこれらについてどう考えているかが、あなたの人生に様々なかたちで影響をしているのです。
今度は、コーチングを例に考えてみましょう。
・「コーチングは役に立つ」と言っている人
・「役に立たない」と言っている人
どちらが正しいのでしょうか?
これまでの体験が違ったために、コーチングに対する見方(考え方)が違うだけですね。
ところが、「役に立つと思っている人」は、自然とコーチングが役に立っているところを見よう(探そう)とするので、実際にコーチングが役に立っているところを見てしまいやすいのです。「役に立たないと思っている人」は、コーチングの効果を生んでいない部分や、ほかの手法の良さを見てしまいやすいわけです。
相手のことを嫌いになると、余計にだめな部分が目につき始めたり、いい人だと思うと他にもいいところが見つかったりするのと同じことです。
自分の考えている通りに、現実が見えてしまうのです。そして、ますます自分の考えが客観的事実だと思い込むということになりがちなのが、私たちです。
ですから、「どちらが正しいかで言い争いをすること」は、虚しいことだと思います。どちらもそれぞれの観点から物事を見ているだけなのです。どちらも「お互いから別の見方を学べ、成長できる」というのが、私たちの考え方です。
ピンク色のレンズの眼鏡をかけている人は、世界がピンク色だと勘違いしている。
アドラーは、『人は意味づけの世界に生きている』と言っています(主観の世界)。人は自分で意味付けをし、それを事実だと思って生きているというのです。
そして、自分が「事実だと信じていること」は自分にとっては当たり前すぎて、「自分が何を信じ込んでいるのか? 他にはどんな考えがあるのか?」などを考えることはほとんどないのです。
では、そんな私たちの考え方は、ずっと変わらないのでしょうか?
アドラーの答えは「私たちの考え方は、死ぬときまで変わる(変わり得る)」です。
どんなときに自分の考えが変わったかを思い出してみてください。
例えば、
・新しい国に行ったとき
・面白い人に会ったとき
・手痛い失敗をしたとき
・やってみたら案外簡単にできたとき
・問い詰められて辻褄があわなくなったとき
・繰り返し言われてだんだんそんな気になったとき
他にもいろいろな形で自分の考えが変わった瞬間があると思います。私たちの考えは、いつでも変わる(変わり得る)のです。
そして、私たちの考えが変わったときに、私たちの普段の思考が変わり、感情が変わり、行動やふるまいが変わり、そして、人生が変わりはじめるのです。
ですから、いくつになっても、人生はどんなふうにでも変わる可能性があると、私たちは考えています。
クライアントは、「これまでの体験(の一部)からつくられた主観の世界」に生きているわけです。
そのクライアントの主観(考え方)が何かのきっかけで変わったときに、クライアントの人生は変わりはじめます。それが、私たちがコーチングを通じて起こしたいことなのです。
とはいえ、考え方が変わりさえすれば何でもよいわけではありません。新しい考え方は新しい人生をつくりますが、それは必ずしも幸せな人生とは限らないからです。
では、どんな考え方を持ったときに私たちは幸せになれるのでしょうか?
あなたには、ぜひこの問いかけを大切にしてもらいたいと思います。そのように自分に問いかけることも、幸せな人生に向かってのスタートなのです。